勃起不全、勃起障害といった表現を用いられるEDの発症原因は1つではありません。神経や血管のトラブルなど考えられる要因は複数あり、発症に至るメカニズムも様々です。原因が違えば、改善するために必要な治療方法も異なります。病気についての理解を深めた上で、自分の症状に合った適切な治療を受けることが改善に向かう第一歩です。

神経障害による発症のメカニズム

いくつかあるEDの原因の中でも、比較的多いと言われるのが神経障害です。男性の体は、外部から性的な刺激を受けた時に神経の伝達で勃起するメカニズムになっています。何らかの原因で神経系にトラブルが起来ている状態だと、どんなに強い刺激を受けても陰茎まで正確な情報伝達が行われません。神経系のトラブルで考えられる主な原因は、アルツハイマーや糖尿病の合併症で起こる、糖尿病性神経障害などです。

糖尿病性神経障害は血糖値を安定させることで改善に繋がると言われています。症状が軽度であれば、バイアグラを始めとした血流を増加させる効果が期待できる薬の服用も、有効な治療方法の一つです。脊髄損傷や脳出血で深く神経が傷付いていると、薬を服用しても血管膨張作用が期待できません。薬の服用による十分な効果が現れない時は、陰茎部分に直接注射をする、ICI療法による治療を行います。

血管障害のメカニズム

神経系と並ぶEDの原因が血管障害です。男性の陰茎は、外部からの刺激を受けた脳から送られてきた信号に反応して、陰茎海綿体に血液が大量に流れ込むことで、勃起現象が起きます。脳からの信号が正常に陰茎に送られても、血管が正常な働きをしなければ勃起することができません。血管障害の考えられる原因は、動脈硬化です。動脈硬化とは、文字通り動脈の血管部分に本来ある弾力性が失われてしまう状態を言います。

動脈硬化というと加齢によって起こるイメージを持たれがちですが、喫煙や高血圧、糖尿病などの影響で発症するケースも少なくありません。20代や30代の若い年齢でEDになる人が増加傾向にあるのは、生活習慣の乱れが影響にあると考えられています。血管障害によるEDは、生活習慣の改善による治療が基本になりますが、効果が現れない時は血管を広げる外科手術を受けることも可能です。ただし、日本ではEDによる血管膨張の外科手術に対応している病院はそれほど多くありません。カテーテルを利用した治療なので、血管が完全閉塞している状態の人には適用できないので注意が必要です。

心理的トラブルが原因のED

心理的要因によるEDは、20代、30代の若い世代に増加していると言われています。心理的要因は大きく分けて現実心因、深層心因の2つです。現実心因は、仕事におけるプレッシャーや人間関係など、日常生活で溜まるストレスのことを言います。そのほかにも、過去に女性との性交渉で失敗した経験による不安で体が拒否反応を起こすケースも少なくありません。現実心因は深層とは異なり自覚症状があるのが特徴です。ストレスの原因になっている物を取り除くことで、改善されることもあります。

深層心因は幼い頃のトラウマなど、無意識に抱えているストレスのことです。本人に自覚症状がないことから、現実心因に比べて原因が発見し難いと言われています。深層心因はED専門の薬の服用で、不安を取り除いて機能の改善を図る治療が基本です。投薬による改善が期待できない時は、心療内科での治療に切り替えることもあります。

専門医の早期受診が重要

男性特有の病気、EDは自然治癒が難しいと言われています。恥ずかしさを理由に受診をためらう男性も多くいますが、放置を続けると脳梗塞を始めとした、別の深刻な病気に繋がるケースも少なくありません。治療を開始する時期が早ければ、回復までの期間が短くなります。勃起不全を自覚した時点で早めに専門医の診断を受けることが大切です。